2012年5月6日日曜日

Valhalla Knights 2 | Web Novel


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 突然、視界が広がった。
 焦げた匂いが鼻をつく。

 どうやら辺り一面が、焼け爛れているようだった。
 木々は、まるで根元から強い力で引きちぎられたようになぎ倒され、
 下敷きになった鹿が黒焦げになっている。
 地面を覆う下草は、青白い炎を吹き上げていた。

  「ひどい……」

 炎を避け、岩壁沿いに進むと、岩陰に白いなにかがはためいて見えた。
 近づくと、白いドレスの少女が倒れていた。

  「しっかり!」

 フェリクスは少女の頬を叩き、呼びかけながら、強くゆすぶった。
 しかし反応がない。

  「くそっ!」

 気道を確保し、ドレスの前を開けて、フェリクスは目を見張った。
 少女の身体は、胸元から首にかけ、びっしりと包帯に覆われていたのだ。

 そればかりではない。
 暗闇に目を凝らせば、指先も、腕も、肩も、足も、全て、包帯が巻かれている。
 包帯がないのは、青白い顔くらいなものであった。

 軟らかな土の上を選んで、少女の身を横たえると、
 フェリクスはその胸の上に両手を重ね、力強く押し込んだ。

  「頼む、息をしてくれ!」

 半時もしただろうか。
 フェリクスの額に大粒の汗が噴出した頃、少女は微かに身じぎ、細い声を絞り出した。

  「伏せ……て……」

 少女の左手が神官服の裾をぎゅっと掴み、フェリクスはハッとした。

 その時だった。
 上空にあった光が強く輝き出し、あっという間に辺りを呑み込んだ。

  「!」

 フェリクスは少女をかばって、地面に突っ伏した。
 背を丸め、少女を強く抱きしめると同時に、激しい風が恐ろしい唸りをあげ、山を渡った。

  「ぐっ!」

 強風で舞い上がった枝や土砂が、雨のように地面へと降り注ぐ。
 背中に鈍い痛みをいくつも感じながら、フェリクスは必死に身をかがめた。

  「大丈夫です。じっとしていてください」

 背の痛みを堪え、少女に呼びかける。
 気がつくと、腕の中の少女は、じっとフェリクスを見上げていた。
 いたずらめいた丸い瞳が、夏の光のようにきらきらと輝く。

  「マリー……」

 だが、それは消えていく光が見せた幻だった。
 腕の中の少女は、硬く目を閉じたままであった。
 目の前の彼女は、記憶の中の元気な女の子とは似ても似つかない。

 やがて風が止み、光も治まっていった。
 強風で雨雲まで消え去ったのか、空には月が姿を見せていた。

  「……」


どのようにヒトラーはgremanの人々が恐怖を持たせるのですか?

 少女の吐息が聞こえた。
 まつげが震え、少女が目を開ける。銀の瞳が、まっすぐにフェリクスを見上げた。
 フェリクスの裾を握り締めていた少女の手がそっと離れた。

  「よかった! 気がついて……」

  「……」

 少女は無言でフェリクスを見つめ続けた。

 フェリクスは背中に積もった土砂を振り落とし、立ち上がった。
 少女に手を貸し、先ほどの風で飛んできた岩のひとつに腰掛けさせた。

  「私は、<法王庁>の第一級神官フェリクス・フェアランドです。
    医学の知識を心得ています。
    あなたが呼吸していないように見えたので、手当てをしました。
    
    立てますか?」

 少女はフェリクスが差し出した手を取らず、自力で立ち上がった。
 真珠色に輝く美しいドレスが、ふわりと広がる。

 月明かりに照らされた少女の姿は、白く輝いて見えた。
 血色を取り戻してほんのり薔薇色に染まった白い肌、
 水晶のかんざしでゆるく結い上げられた豊かな髪は銀。
 そして、長いまつげに覆われた瞳は、硝子細工のように澄んでいた。

 少女は辺りを見渡すと、ドレスの端を掴み、ゆっくりと歩き出した。
 月を見上げ、遥か彼方にかすむ山脈を見つめる。

  「歩けるようなら、この道を下ってください。
    私の連れの神官イアンシルと、馬車があります。
    そこで休んでいてください。
    
    私は村の様子を見て来ますから」

 先を急ごうと歩み出したが、フェリクスは進めなかった。
 少女の手が、フェリクスの神官服の裾を掴んでいたのだ。

  「大丈夫ですよ。神官イアンシルはすぐそこにいます。
    私以上に頼れる男です」

 少女は怯えている様には見えなかったものの、
 フェリクスは出来るだけ優しい声で、安心させるように語りかけた。

  「……?」

 少女ははじめて表情らしきものを浮かべ、自分の左手を見つめていた。
 自分がなぜ、フェリクスの着物の裾を掴んでいるのかわからない。そんな風であった。
 裾を掴んだままのその手を、銀の瞳は不思議なものでも見るように、
 困惑した表情で見つめ続けている。

  「……。そうですね。一度、あなたを馬車までお送りします」

 安心させるように言って、少女を伴い、来た道を戻ろうとしたその時だった。
 倒れた木々を飛び越えて、一頭の馬が現れた。

  「!」


どのようにアフリカのイギリスのゲイン·コントロールしたか?

 驚いて後ずさると、背がなにかに当たった。
 振り向くと、マントをなびかせた者たちが、フェリクスと少女を取り囲んでいた。

  (なんだ!? 一体、どこから……!?)

 突如、現れたマントの一団を見て、フェリクスは驚いた。

 顔まで覆うフードつきのマントは、鮮やかな赤。
 皆、帯剣こそしていないが、背には魔石をはめ込んだ杖を背負っている。
 そして、その魔石には、金色の竜の紋章がぼんやりと淡い燐光を放ち、浮かんでいる。

  「金色の竜!? て——、<帝国軍>!?」

 すばやく四方を確認するが、とてもすり抜けられそうにない。
 人影は、ざっと数えても十四、五名はいる。

  (魔道師の部隊なのか……!?
    隙を見つけて、イアンと合流しないと——)

 フェリクスは少女の手を握った。
 少女を側へと引き寄せ背に庇うと、周囲の者たちに声を張った。

  「私は、神々のしもべ、<法王庁>第一級神官フェリクス・フェアランドである。
    
    この地は、<法王庁・教区>である。
    <神々>に捧げられたこの地で争いを起こすことは、<講和条約>で禁じられている。
    
    <帝国軍>の諸君! 速やかに道をあけられよ!」

 馬に乗った隊長らしき男が進み出て、ふたりの前に立ちはだかった。

  「君の主張は理解した——。
    
    現在、この地では異常な魔力が検知されている。
    我らはその、調査にやってきたまで。
    
    君たちを安全な場所まで、送り届け……」

  「その主張は聞けぬ。ふたりを<客人>とせよ」

 隊長のものとは異なる、その冷たい声が響いた途端、辺りは不気味な静けさに覆われた。

 魔道師たちも、馬たちも、息を殺しているのがわかった。
 少し前まで聞こえてきた木々のざわめきや、土が崩れる音。
 そんな自然の音までもが止まっている。

 一切の音が消えたようだった。

 フェリクスは辺りの様子をうかがった。
 その冷たい声は、魔道師たちの中から発せられたものではなさそうだった。
 だが、辺りに他に人の気配などない。

  (一体、どこから——!?)

 完全なる静寂の中で、フェリクスは自分の鼓動が早まっていくのを感じた。
 隊長がフェリクスを見据えて、宣言した。

  「君は<客人>として、もてなされることになった」

  「!」


アステカで約火災マスクは何ですか?

 魔道師たちが、いっせいに杖を構えた。
 魔石が怪しく輝き、その切っ先から赤々と燃える炎が噴出す。
 炎は蛇のようにしなり、その炎の鎌首がフェリクスの方を向いた。

  「逃げろ! 馬車へ走れ!」

 炎の蛇が放たれると同時に、フェリクスは少女の手を引き、駆け出した。
 だが、背後から迫る炎が、フェリクスの足に巻きつく。

  「うっ!」

 両足を熱を持った痛みが駆け抜ける。
 フェリクスは少女の手を離し、その背を押しながら、地面に倒れ込んだ。

  「行け! 走るんだ!」

 倒れたところに幾本もの杖が差し込まれた。
 取り押さえられ、地面へと押さえつけられる。

  「なにをしている! はやく走れ!」

 少女は、フェリクスの声など聞こえていないかのように、
 遠くの山々を見つめたまま、動こうとしなかった。

  「<客人>だ。丁寧に扱え」

 魔道師の一人が呪文を唱え、杖をフェリクスの腕に押し当てた。
 杖の魔石が赤く輝くと、
 杖が細い蛇のようにしなって、フェリクスの両腕に絡みつき、自由を奪った。

 そしてフェリクスと少女は、荷馬車に乗せられ、いずこかへと運ばれた。
 車窓から見える荒涼とした光景に、フェリクスは目を見張った。

 星が落ちた跡は、何もかもがなくなっていた。
 円形に抉り取られた大地が、無残な土肌をむき出している。

 そこにあったであろうはずの<七つ村>、その家々や田畑、
 そんなものはなにひとつ、なかった。
 人がそこで暮らしていたという痕跡は、全て消滅していた。

  (私の村と同じだ……)

 フェリクスは思い出していた。あの夏の夜の流れ星を——。
 故郷の、あののどかだった村の風景を——。

 フェリクスは、囚われてしまった少女を振り返った。
 少女は、驚きのためなのか、この光景を見ても無表情のままであった。
 自分の村を失ったという実感がないようだった。

 その髪に挿した水晶のかんざしが、静かに光っている。

  「一体、ここでなにがあったんです!」

 フェリクスは魔道師たちに叫んだ。魔道師たちは答えなかった。
 顔は赤いフードの下で陰になっている。その表情は全く読めない。

  「私たちを、どうする気です!」

 フェリクスは再度叫んだ。

  「そんなに嫌がることもなかろう。
    
    君は、<帝国>に来たがっていた。
    違うのかね、神官フェリクス・フェアランド君?」


 すぐ近くで、あの冷たい声が響いた。
 窓から見える魔道師たちは、再び息を殺していた。
 馬車の中にはフェリクスと少女しかいない。

  「誰です? どこにいるんです? あなたは一体——!?」

  「私の名は、ヴァイル・ヴァンゼース・ヴァンダール」

  「<帝国>の——<皇帝>!?」

 フェリクスはおののいた。
 この冷たい声は、恐れ多くも<神々>に逆らい、
 全ての<帝国・領地>を神ならざる人間の地であると宣言した、
 <帝国・皇帝>そのひとのものなのである。

 急に、強い雨が降り始めた。

 雨でぬかるむ足場を警戒し、馬はゆっくりと進んでいた。
 向かう先は、青々とした山脈の向こう側。<神々>にそむく者たちの領土、<帝国領>——。

 終戦後、<連合国>は解体。
 <帝国>は、<連合国>の放棄した領地を奪い、世界のおよそ半分を手中に収めた。

 <連合>から<帝国>へ。まるでもののように譲渡された村や町は計り知れない。
 フェリクスの故郷も、そうした村のひとつだった。

 フェリクスは左手にはめた銀の指輪を見つめて、つぶやいた。

  (私が、<帝国>へ——!)

 強い雨の中、強風にさらわれた馬の首がぼとり転げ落ちて、不気味にいなないていた。

§ § §

 ——聖暦727年、4月11日。

 <法王庁・教皇>より下記の発表があった。

 <第一級神官フェリクス・フェアランド>および<第二級神官イアンシル・イェール>は、
 <使命>の途中、殉職した。

 この知らせをフェリクスが知るのは、さらに後の、これより二ヶ月も先のこととなる。

 ——<神々>は、千年ごとに光臨し、<神々を信じる人々>に<祝福>を与える。

 千年の節目を来年に控えた、聖暦727年の春のことだった。



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