21世紀のテニスがやってくる? | Tennisnakama.com
ソーダリンvsベルディフの準決勝の解説はジョン・マッケンローでした。 「この二人はプロ界きってのパワーヒッターだから、この試合は21世紀のテニスを象徴する試合となるはず!」と興奮を隠しきれない様子で解説しています。
私もこのままパワーテニスが進んでいけば、多くの選手がソーダリンやベルディフのようなプレースタイル(ビッグサーヴとビッグストロークで相手をパワーで打倒する)に移行していくことは免れないと考えていますので、そういった点からもマッケンローの言う「21世紀のテニス」には大変興味がありました。
試合が始まったときは、私もレッドクレーでテニスをしていましたので生観戦ができず、後に録画で観戦したのですが、予想通りウィナーの多いパワフルなゲームでしたが、ヴァラエティーなショットに欠け、ちょっと期待はずれの5セットでした。これは多分結果を知っているため、スリルに欠けてしまったのだと思いますが・・・
前号の『クレーの歴史が変わってしまった!』の記事で多くの方からコメントをいただきました。その中でろでぃおさんのご質問、「 トップ選手の多くが超パワースタイルになり、フェデラーを筆頭とする華麗な技を披露する選手が蹴散らされることになった場合、テニス界の将来は今まで以上 に盛り上がっていくことができるのかとわたしは不安に感じてしまったのですが、tennisnakamaさんはどのように感じられますか?」に私の日頃イメージしているパワーテニスについて述べてみました。
2012 NFLドラフトの上位100私のコメントはソーダリンvsベルディフ戦を観る前の、いわゆる私の頭の中で描いていたパワーテニスです。私は以下の3条件を満たすことがまず必要だと書きました。
(1)コンシステンシー
パワフルなショットだけに、確率に問題があります。エラーが多くなりますので、安定したショットが最低条件となります。
(2)相手に時間を与えない攻撃テニス
オンザライズ、ディープショット、フラットなショットは相手を攻撃的にさせない重要なショットです。ナダルの進化がめざましく圧倒的に強くなってきたのは、この「相手に時間を与えない攻撃テニス」ができるようになってきたからだと思います。
ソーダリンは、ベルディフのフラットでディープでパワフルなショットにてこずったと述べていましたが、これはベルディフの最大の武器です。しかしフラットなだけにネットにかけたり、ロングになったりする危険性の多いショットでもあります。
(3)足
パワーテニスに対抗するには足の速さが絶対条件です。サイドラインをパワーヒットで狙ってきますので、まず足が速くなければ追いつけません。フィットネスと同時に、フットワークのスピードとリカヴァリーがさらに重要になってきました。
21世紀のテニスに危惧
今まではパワーゲームはテンポが速く、時代に合ったエキサイティングな試合を生み出してくれると思っていましたが、二人の試合を観て、パワーテニスの将来への危惧を抱いてしまいました。どうも試合が単調になってくるのです。
圧倒的なサーヴィスパワー
ベルディフが21、ソーダリンが18のエースをとりました。エースをとらなくても、多くがリターン不可能なサーヴでウィナーをとっています。かりにリターンができてもショートリターンとなり叩かれてしまいます。いわゆるワン・ツー・パンチのテニスで、ラリーを許さないテンポの速いテニスです。
サンプラスがテニスの人気を殺したとよく言われるのは、このクイックなテニスの展開にあります。ときどきならよいのですが、このワン・ツー・パンチが続くと変化に乏しく飽きてくるのです。
エラーが多すぎるテニス
パワーヒットはリスキーなショットですので、エラーを伴います。ソーダリンvsベルディフ戦では、ソーダリンはエラーが63、ベルディフが41です。5セットですから多いのは仕方がないとおもいますが、ソーダリンは3セットにすると38のエラーのペースです。これはやはり多すぎます。エラーが多い試合はつまらなくなります。いくら目の覚めるようなウィナーが打ててもそれはマッケンローのいうflash of brilliance にすぎないのです。
ヴァラエティーに欠けるテニス
ネットプレーがますます減ってきました。パッシングショットで抜かれてしまうので、ネットにくるのは相手の球が浮いてきたときにネットで叩くのみ。ソフトタッチのヴォレーの芸術が姿を消してしまいそうです。
ナダルvsソーダリンの予想
ナダルvsメルツアーの試合を観ましたが、ナダルは3セット目でhiccupがあったものの、第1・第2セットは理想的なプレーでした。ナダル自身も最高のできだったと言っていますが、問題はソーダリン相手にどれだけ自分のゲームをさせてもらえるか?
ソーダリンが優勝するには
ソーダリンの武器はフォアハンドだけでなく、バックハンドのダウン・ザ・ラインでウィナーをとれることです。ナダルを左右にフォアハンドで振って突然、ダウン・ザ・ラインを打ってくるので要注意です。もしサーヴがよく、エラーがすくなければソーダリンが優勝するかもしれません。しかしベルディフとの戦いをみて、ソーダリンのエラーが必要以上に多く、コンシステンシーに問題があるように思います。昨年はプレッシャーがありませんでしたが、今年は決勝2度目のチャレンジで事情が違います。
ナダルが優勝するには
ナダルが最も注意しなければならないのは、フォアハンドコーナー(アドコートのコーナー)が狙われることです。ソーダリンの最も得意とするウィナーはフォアのインサイドアウトで、このコーナーを突いてきます。
ナダルはサーヴが76%の高率でした。このハイレベルなサーヴと精神の calmness がキーとなると思います。ソーダリンのサーヴィスエースやウィナーに惑わされることなく、平静な気持ちを保つことができれば、ナダルの優勝。焦るとショートボールになって昨年のようにソーダリンに叩かれます。
ソーダリンもナダルもこの一年の進化は目覚ましいものがあります。タイトルへの執念も二人とも五分五分。
しかしソーダリンはベルディフに5セット6-3, 3-6, 5-7, 6-3, 6-3の接戦をしています。一方ナダルはメルツアーにストレートセット6-2, 6-3, 7-6(6)の快勝です。この違いは無視できないエレメントのような気がします。体力的にもメンタル的にもナダルはフレッシュ。というわけで、私は4セットでナダルの優勝を予想していますが・・・さてどんな試合を展開してくれるでしょうか?
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